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(1)丁寧に暮らしを描く

zeronext project の詳細をお伝えする連載シリーズ。
第1回目のテーマは、「間取り」。
前述の通り、今回の建物は設計者の自邸ではあり、施主と設計士の両面をあわせ持つ。
その両方の視点から、建物のプランが固まるまでのプロセスを垣間見て頂けたらと思う。

 (1) まずは、土地を検証する。

←北    ↓西   ↑東   南→
緩やかな北斜面。南側隣地は約70センチ高く、北側隣地は60センチほど低い。西側にバス通りが面し、車通りは多く反対側の児童館は人の出入りが多い。東側隣地は二区画を一世帯が所有し、その敷地内での南側は大きな庭となっており建物はない。南側は駐車場、その更に南は空き地なので、南東から西側の道路に向けて(つまり真東以外)の日当たりは住宅密集地にしては非常に良い。しかし、南側の駐車場、西側の通りと児童館からの目線は、プライバシーの点から遮る必要がある。
「プライバシーの確保」と、「日当たり・開放感」の矛盾する二つを解決することが、ひとつのポイントとなる。

 (2) 住まう家族の価値観と、暮らしのイメージを共有する。
当然ではあるが、プランニングの素(もと)となるのは、住まわれる方が「どんな暮らしをのぞんでいるか」である。もうちょっと大げさに言うと、「生き方」とも言えよう。自邸とは言っても、本人だけが住むのではないため、家族みんなが想い描く暮らし方を、改めて語り合い、整理していくことになる。
とりわけ、今回の場合は、
■おおらかに、のびのびと
■いつも家族を感じながら
■無駄なくシンプルに
■身近に季節の変化を感じたい
■子供4人の、6人家族 
   と、こんなところだろうか。

 (3) 暮らしのイメージを持ちながら、ゾーニングする。
〔1F〕
 ここまでの段階では、文字や頭の中の映像としてしかなかったものを、いよいよ紙の上で表現する。“エスキス”と呼ばれるこの作業で、設計者は、さらにプランのイメージを広げ、方向性を見出していく。
さてここでポイントとなる点が、もうひとつ。
それは、二次元つまり平面のみのゾーニングに留めないこと。
特に零の建物では、「横の広がり」と「縦の繋がり」が大きな特徴であるため「三次元」でのゾーニングが重要となる。
また、建物だけを単独で考えるのではなく、必ず隣家や外とのつながりまでをイメージするようにしたい。
〔2F〕
       
拡大図面

 (4) ラフな手描のプランを引いてみる。
ゾーニングをもとにして、ラフプランに落とし込んでいく。
ラフとは言っても、実際に建築することのできないプランを書いても仕方がない訳で、ここからは「構造」、とりわけ「木組み」のルールを頭に置きながら、進めていく。特に零で採用している木組みでは、強度面や合理性の観点から「構造」と「間取り」とが素直な関係であることが不可欠であるため、専門的な知識が必要となる。例えば、構造を無視した在来工法のプランニングほど、気軽に自由に配置していく分けには行かないのだ。

 (5) ラフプランで、ひとつひとつ丁寧に考え抜く。
←南    北→
ラフプランの方向性と設計者の頭の中を、ひとつひとつ覗き見していくことにしよう。


「プライバシー」と「日当たり・開放感」を考える
南側の家々の窓の高さまで樹木等の外構により遮る。風は通す。光はその上から招き入れる。西側・北側・東側は閉じる。南側の上部のみ大きく開く。窓の大きさは当然南側は大きく、その他は最低限の風を通すのみとする。ゆえに引き違いの窓ではなく、縦すべりの窓にする。
つまり、「外に閉じて中に開く」設計である。

「室内のつながり」を丁寧に考える
「室内」という概念を広げる。
①外壁に囲まれた空間(構造的室内)
②屋根のある空間(設計的室内)
③樹木・外構・外壁など「閉じる部材」でかこまれた空間(概念的室内)
つまり、南側外構(植栽)と北東西の外壁で囲まれた空間。ここを居住空間と位置づける。構造的室内の南側窓、設計的室内の南側柱は存在感を消すことにより、室内空間のイメージを③の概念的室内に導く。①構造的室内②設計的室内の存在感を消す。
技術の部屋「間取りという考え」もご参照下さい。

同時に「立体的」に計画を広げていく、三次元設計。
キッチンに光を導く南側の吹き抜けは同時に一階リビングと2階をつなげる。つまり、2階もリビングの一部。光・声(会話)・風 が通り抜ける一つの空間。隔てる部屋は二階の寝室と水周り、収納部のみ。その他はワンルーム。当然先述の南側デッキ~庭(植栽まで)も含めた一つの空間。その空間は吹き抜けやバルコニー、透明な屋根を通じて青空と太陽まで含める。どれだけ外部と内部を隔てるかではなく、どれだけ外部と内部をつなげるか。
または前述の①②での意味の外部という空間を③の室内に取り込むか。しかし、同時に③の室内を確立するために、南側隣地・西側道路・駐車場とは明確に隔てる必要がある。
また、デッキ左右の連立柱は東・西の外部と③室内を隔てる役割。
広いデッキと2階バルコニーは庭・空・太陽と①②の室内をつなげ③に取り込む装置として機能する。

敷地へのアプローチを考える
敷地に対してアプローチは当然道路側の西側。しかし西側は通りの人や車やバスなどと隔てる必要がある。車を停める駐車スペースは隔てた外側に設定。そこ(庭という室内)との間に明確に壁を造る。ファサードは西側である。しかし、閉じたファサード。ある程度の閉鎖感を出す。窓は小さめ。

家事の流れを考える
限りある敷地の中に駐車スペースや法的離隔を取りながら③室内を広げるため、なるべく2階に持っていけるスペースは2階に上げる。→フロ・洗面を2階に上げる。キッチンと遠くなるため、家事動線が長くなるデメリットがある。しかし、キッチン作業と洗面所などの水周り作業との関連性は低いためあえて採用。2階で風呂に入るため、2階で洗濯物を出す。2階で洗濯。2階のバルコニーに干す。2階で取り込み、2階でたたみ、2階のタンスにしまう。洗濯物を持って階段を上がり降りする必要がない。
1階に持たせる役割が減るため、庭という室内を含めた1階の生活空間が広く取れる。

子供たちのスペースを考える
子供のためのスペースは2階リビングに。子供の成長に合わせた変化に対応。小さいうちはワンルームでリビングの一角として。年齢に応じて家具でやわらかく仕切る。そして、仕切る必要がなくなったら、もとに戻すなり、次の用途に合わせて変化させるなりすることができる。長い家の寿命を考えれば、ある一時の用途のために、建物をガチガチに固定してしまうのは、合理的ではないと言える。
子供スペースを4つに仕切った場合のプランはこちら。
技術の部屋「子供室の設計」もご参照下さい。

キッチンを考える
キッチンは家の司令塔。司令官のおかあちゃんは常にすべてのエリアに目と耳が届く必要がある。吹き抜けと南側の大きな窓は空間を広げ、おかあちゃん制圧地域を広げる。おとうちゃんの逃げる場所はトイレ・フロ・寝室くらい。どこにいても家族の息遣いを感じることができる。


 (6) プランを確定させる。
 
                   ← 西  ↓   ↑    →
このようなプロセスと、ご家族とのさらなる検討を経て、プランは出来あがる。
これは今回の建物に限ったことではなく、表現方法に違いこそはあれ、全てのプランについて行なわれる。全てはご家族との出会いと、語らいからスタートするのだ。よって描かれたプランは、ご家族の描く暮らしのイメージを映し出し、さらにまだイメージの及ばない未来への暮らし方さえも照らしてくれるものとなるのだ。
 


 
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