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(4)暮らしの収納



zeronext project の詳細をお伝えする連載シリーズ。
第4回目のテーマは、「床下収納」。

家づくりをお考えの方にとって、収納は大きなテーマの一つ。そもそも収納は、私たちの暮らしの中でどうあるべきなのかを掘り下げながら、今回のprojectで取り組んでいる、「高基礎と畳の小上がりが生み出す、床下収納」について、ご紹介していきます。
 
 

そもそも収納は、どうあるべきか
家づくりを考えるとき「収納」は大きなテーマとなる。それは、時として「構造」や「間取り」をも凌ぐほどの関心事であり、多くの住宅会社もこぞって「収納」を売りにしたCMを展開しこの状況に拍車を掛けているようだ。
「備えあれば憂えなし。せっかく新築するんだから、収納はゆとりをもって‥」とか、「あらゆる隙間という隙間を見逃すことなく収納に‥」など、期待は膨らむわけだが、ひとつ再認識しておかなければならないことがある。それは、収納のために家を建てるのではないと言うことだ。
大量の食料の備えや、先祖代々受け継がれてきた宝物の類を収納しなければならない必要性は皆無に等しい。収納すべきは、圧倒的に日常の暮らしの中で使用する道具やもの達であり、それらをいかに使いやすく、収納しておけるかが、まず考えるべきことに違いないだろう。

蔵のように、収納そのものを目的とした建物づくりではないことは確かだ。⇒
※社内研修で訪れた隈研吾による“石の美術館”の写真を引用
 

ここから、私たちが日頃行っている設計において、収納に関するいくつかの原則を紹介していく。

収納設計の原則① 暮らしの流れの中に配置する
せっかくの家づくりをする上で、不便な場所にある収納に合わせて動けばいいや、と考える人はいないだろう。まず大切なのは、家族の動きの流れをしっかりとイメージすること。その流れの上に、必要な収納を配置する必要がある。具体的な例をあげて説明していこう。

まずは、玄関からキッチンへと続く動線上の収納。
零の多くの建物では、玄関からリビングへ繋がる動線と、キッチンへと繋がる動線の二つが存在する。後者の動線を「奥さま動線」や「裏動線」などと呼んでいる。この奥さま動線は、キッチンへの近道であると同時に、納戸や食品庫の役割も担う。買い物してきた食品や日用品は、ダイニングテーブルにどさっと広げることなく、奥さま動線上の収納にサクサク片付けてしまう。また、その動線が「土間」である場合は、泥のついた野菜や、指定日前のゴミ袋などをおいておくことも可能となり使い方も広がっていく。この玄関から繋がる動線の空間は、暖房されたリビングやキッチンなどの居住空間とは建具により仕切られており、食品の保存にも適したスペースとなるのだ。
(PROJECTでの、奥さま動線 )
 
(キッチンから見る裏動線の食品庫)

(畳の和室。左奥のスペースがWIC兼物置となる)

次に、寝室に直結するウォークインクローゼット(以下、WIC)。プランによっては、ふたつの部屋から利用できるWICもお薦めだ。服を着替える、服を仕舞う、これは毎日のことだから、いくらでもその動きに即し、近くて便利にこしたことはない。
もちろん、キッチンやバスルームなど、使うものを使うところに収納しておくことは、あたり前すぎるが、しっかりと押さえておきたいポイントでもある。

 
収納設計の原則② 大きく大きく、つくらない
あまり意識したことはないかもしれないが、収納にもコストがかかっている。家の中につくる収納スペースは、既に断熱材に囲まれたスペースの内にあり、先述した、土間の奥さま動線のような空間を除き、人が快適に寝泊りすることのできる高級な空間である。もちろん、仕上の仕様をコストのかからないものにするなどの工夫はするが、それでもかなりのコストがかかっていると認識したほうが良い。もちろん、土地もそうだ。

「収納は、いくらでも大きくしておきたい」という思いは、理解できるし、自分もそう思うことはある。しかし、実際に、大きな収納がもたらすことの中には、コスト以外にも、歓迎できないことも多い。大きな収納は、それだけ奥行きも生まれ、物の出し入れがし難くなる。また、容量に余裕があるが故に、無駄なものがどんどん増えていく。そして、いつしか暮らしの中の“シワ寄せ場”となり、足が遠のき、暮らしと完全に隔てた空間になってしまうのだ。繰り返しになるが、収納は、暮らしの中にあり、使う人が気軽に気持ちよく使える、いわば活きた収納であるべきだ。家の中に大きな使われないスペースをつくってしまわないように注意したい。

収納設計の原則③ あえて、つくり込まない
長寿命の家の収納は、あえて、つくり込まないことが重要となる。使うもの全てを収納計画に盛り込み、パーフェクトにつくり込んだ収納は、使いやすく、お客様の満足度も高い。しかしそれは、現時点にしか過ぎない。このような“完全”な収納は、収納したい物の変化に対応できずに結果として不便な収納になってしまうのだ。これは、収納に限ったことではなく、間取りそのものにも言えることだ。
現在の日本の家の平均寿命は、およそ27年程度で、先進国中最も短いとも言われている。その原因は、構造の耐久性だけではなく、細かくつくり込み過ぎた間取りがもたらす無駄の多さと、住み難さといった不満だ。家の寿命を100年・200年といった単位で考えるならば、当然収納も、時を越えて、しなやかにカタチを変えながら、家族の暮らしにとって便利であり続ける柔軟性が不可欠だと言えよう。零の家では、取り外しできて高さの変えられる棚板やパイプを多様するとともに、既成品のスチールラックなどの置き家具の使用もお薦めしている。考えてみれば、50年後、100年後には、今の世の中に存在しない多くのものが存在するのだから、収納にも多くの可能性を残しておくことは当り前のことなのだろう。
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(シンプルな造作のWIC)
 

<PROJECTでの造作PLAN>
キッチンキッチン背面土間納戸
洗面脱衣所寝室

前置きが長くなったが、ここからようやく「床下収納」の話に入る。

なぜ、床下なのか
零の家は、全てベタ基礎であり、外周は断熱材で覆われている。つまり、断熱的には床下も室内空間となる。居住空間との境、つまり床板は気密や断熱を必要としないので、開閉することによるデメリットはない。もともとそこには、大きな空間が存在するのだが、キッチンの床下に600mm角程度の床下収納を設ける以外に、今まで活用することはなかったわけだ。そうした空間に大きな床下収納としての用途を持たせることは、他の方法と比べて、低コストである点や、面積を犠牲にすることのない点などにおいてとても魅力的である。

通常、零の家の基礎の立ち上がりの高さは420mm。 これでも充分な床下空間はつくられているのだが、今回のプロジェクトでは、150mm高い570mmの高基礎とした(+300mmを目指したが、北側斜線に抵触することから150mmとした)。さらに、和室の畳の高さを380mm高くすることで、実質的に深さ1000mm程の床下空間をつくり出した。畳の小上がりが、8畳の広さであるため、その床下空間はおよそ押入れ約3.5個分に相当する。
日常的によく使うものは、使いやすい所へ、使う頻度が少ないものは、床下へ。
そうした使い分けで大きく活きてくる収納となるだろう。 

高基礎と小上がりがもたらす副産物

今回の床下収納計画には、新たな収納スペースの創出の他にも、いくつかの副産物がある。その中から、ふたつのことをご紹介しよう。
 

(PROJECTでの、床下の様子)

まずひとつは、メンテナンス性の向上。言うまでもなく、床下の高さが高いため、もぐりやすく、作業性が抜群に良い。さらに、それにもまして、効果が期待できるのが、床下を身近に感じ、そこを覗いてみる機会が増えるということだ。家族が日常的に点検をし、いち早く異常を発見することができるというメリットは、副産物という表現以上に大きい。木組みの躯体が表しであるように、床下も、目にすることのできる「素直で正直な家」は、家庭の医学における初期段階での発見が何よりも効果的なのだ。

もうひとつは、小上がりに座っている人と床にいる人との目線の高さの隔たりが和らぐというメリット。
床と畳のレベルが同じだと、どうしても畳に座っている人からは見上げることになり、床に立っている人からは、見下ろす構図となってしまう。ダイニングチェアと同じ380mmの高さの小上がりの存在は、、立っている人と目線の隔たりを和らげ、テーブルに就いたときには、ちょうど同じ高さにしてくれるのだ。
段差ができる事への危惧の声もありそうだが、これだけ大きな段差につまずくことなどありえず、逆に、膝に負担を掛けることなく、腰を下ろすことも立ち上がることもできる、やさしい設計でもあると言えるだろう。
 
(通常の和室の場合)

(小上がりの場合)

収納は、とても重要な設計要素であり、暮らし方を大きく左右するものであるとも言えます。
しかし、それに囚われ過ぎて間取りやコストのバランスを崩してしまっては元も子もありません。
収納はあくまでも手段であり、目的は、いい家づくりの先にある、心豊かな暮らしです。
常に、そこに立ち戻って考えるスタンスが大切なのではないでしょうか。

次回のテーマは、「次世代省エネ基準」。
ZERONEXT PROJECTにおける、断熱性能などのスペックに迫ります。


 
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