03素材とエネルギー湯布珪藻土・漆喰 心身ともに心地よく暮らすために 建築工房零の家では、室内の壁の仕上げは湯布珪藻土、または漆喰を標準で使用しております。 どちらも自然素材と呼ばれる天然由来の素材です。 杉の床や薪ストーブの鋳鉄、炉壁の大谷石も自然素材です。 ではなぜ、零の家はこの2つの自然素材を壁の仕上げとして使うのか、そのほかの素材と比較しながら、その理由をお伝えいたします。 漆喰はどんな材料? 漆喰は、石灰に藁や麻の繊維を加えて、自然由来の「糊」と、水などを加えて練り上げられて作られます。施工後は空気中の二酸化炭素と反応して硬くなっていきます。一般的に知られる漆喰は、昔からある「蔵」の外壁や内装材として使われています。 漆喰は防火性に優れ、硬く、自浄性に富んだ材料です。漆喰そのものがアルカリ性のため、酸性の汚れを中和して薄くしてくれます。蔵の外壁や内壁が白く美しく保たれている理由は、そのような漆喰の特性が活かされているためです。蔵の中の重要な資材を守るために重宝されてきました。 しかし、そんな漆喰もデメリットが存在します。 1つ目は、硬く固まるため壁の補修がしにくいということ。 2つ目は、珪藻土よりも調湿性が劣ること。 硬く丈夫という点で、デメリットが出てきてしまうのです。 珪藻土はどんな材料? 珪藻土は、藻類の一種である珪藻の殻の化石の堆積岩です。湿気を吸うのでお風呂のバスマットや食器乾燥用品に使われているのは皆さんもご存じかと思います。水気を吸い取り、自然乾燥をして湿気を吐き出してくれる。それが一般的に知られ、住宅の内装材としても普及してきました。 零の家では「湯布珪藻土」という珪藻土を使っています。大分県産珪藻土と北海道産珪藻土を混合し、結合材として自然素材のセルロースファイバーと食品のりを使用しているため、自然素材100%の材料です。 珪藻土はナノサイズの小さな穴がたくさん空いて多孔質になっています。その穴に湿気が出入りすることで、室内の湿度をコントロールしてくれます。よって、1番快適な湿度40〜70%の空間をつくる事ができるのです。 その特徴的な調湿効果は、ビニールクロスとどのくらい違いが出るのでしょうか。販売元の広島の会社さん「WonderWall 株式会社」さんが実験しています。コップに熱湯を注ぎ、それぞれの壁材をつけた箱の中に入れ放置します。これは夏の梅雨時期のジメジメした環境をイメージしています。 はじめはどちらも湿度52%でしたが、時間がたつにつれて湿度の差が出てきました。最終的に右の画像の通り、湿度の変化の差は、約20%となりました。 珪藻土を塗ることで、梅雨時期の嫌なジメジメを感じることなく室内はカラッと快適な空間にすることができます。洗濯物の室内干しをしてもよく乾き生乾き防止になります。 逆に冬の乾燥する時期はどうでしょうか? 湯布珪藻土があれば、加湿器が無くても湿度を上げることができます。その方法は「水やり」です。 壁に霧吹きや噴霧器を使って水をかけると、水を吸収し壁表面に溜めてくれます。その水が少しずつ空気中に放出され加湿してくれます。冬の夜の寝る前に壁一面に水やりをすると寝ている間も乾燥に悩むことがなくなります。水を吸ったところは色が濃くなりますが、乾燥すると元の色に戻るため何も気にすることはありません。 それ以外にもお風呂上がりの浴室からの湿気や、鍋の湯気、洗濯物の蒸気も湯布珪藻土が調湿してくれるので、日常生活で発生する湯気や蒸気を上手に使うことができます。 実際、霧吹き前に湿度が36%であった部屋も、霧吹き後は52%まで上昇しました。 この「水やり」はビニールクロスや漆喰ではできません。 では結論、湯布珪藻土が壁材において正解でしょうか? 答えは存在しません。 この素材はダメ。この素材が良い。ではないのです。 自然素材のそれぞれにメリット・デメリットがあります。どちらにもメリット・デメリットがあるので、それぞれを知ってもらったうえで、デメリットの解消法や不安要素をどう削るかを見ていただきたいのです。 自分らしく暮らせるヒントを見つけることができます。 珪藻土と漆喰。どちらも「自然素材」 漆喰年々硬化することで土壁を固める役割と強アルカリ性で土壁を殺菌する役割 ●メリット ・硬化するため、強い壁になる ・アルカリ性が強く、殺菌効果がある ・土壁やモルタルを保護してくれる ●デメリット ・漆喰だけの調湿性能はほとんどない ・調湿する断熱にしないと効果が少ない ・メンテナンスが難しい ・硬化しすぎると冬は冷たい壁になる 珪藻土珪藻土の主原料が多孔質になっており昔の土壁の調湿機能を2mm厚で再現 ●メリット ・調湿効果が高いため、快適空間となる ・メンテナンスがやりやすい ・湿気によるカビ発生を減らしてくれる ●デメリット ・漆喰のように年々硬化しない ・特徴が生かされない珪藻土が多い 珪藻土にも2種類あります。 特徴が生かされない珪藻土樹脂、接着剤、石灰、セメントで固める ●メリット ・つなぎ材で固めるため固い壁ができる ・白い粉が全く付かない ・下地の影響が少ない ●デメリット ・珪藻土本来の調湿機能がなくなる ・調傷汚れの補修ができない ・自然素材ではなくなる 特長が生かされた珪藻土珪藻土だけで固める ●メリット ・調湿効果が高く快適空間となる ・傷、汚れの補修をすることができる ・自然素材100%なので身体にも安心 ●デメリット ・強くこすると白い粉が付着する ・下地の影響を受けやすい ・丁寧な施工が必要 湯布珪藻土は「特長が活かされた珪藻土です。」 メリット・デメリットを見ると自分の価値観が整理しやすくなるのではないでしょうか?自分の好みのメリットが多い素材があなたにとって、おすすめの素材です。 建築工房零に限らず、この素材の話は色々な工務店・メーカーさんにも当てはまる話です。 ・工務店がどんな素材を使っているのか。 ・どんな理由で使っているのか。 施工性、作品造り、快適性重視等、工務店の素材に対する考えは、これから暮らすお客様への思いやりに比例します。 建築工房零では、季節の変わり目の時期に湯布珪藻土の販売元であるWonderWall 株式会社の井筒社長をお呼びして「素材えらび教室」を開いて頂いております。 当日は、実際にいくつかの床材に液体をかけたり傷をつけたりしながら、違いを見比べ、その後の補修方法なども教えて頂きます。 素材の「特徴」のほか、「相性」についても知ることで、ますます楽しい暮らしづくりに近づくはずです。「教室」という言葉に構えてしまう方がいらっしゃるかもしれませんが、ぜんぜん堅苦しい雰囲気はありません。少人数で、楽しい雰囲気のなか、ぜひ「素材」について学んでいきましょう。 WonderWall 株式会社の井筒社長と代表の小野が自然素材について深掘りしている動画もありますので是非ご覧ください。 BACK