04構造と基本性能木の家の断熱 なぜ断熱は必要なのか 快適な室内空間の構築において「断熱」を抜きには考えることはできません。 当然、しっかりとした断熱はCO2の削減や省エネにとても重要なのは言うまでもありません。 そこで、快適な断熱について考えてみます。 まず、はじめに考えなければいけないのが、なぜ断熱が必要なのか?ということです。 目的は何でしょう? なぜこんなことを書くのかというと、目的のための手段である「断熱」がいつのまにか目的になって「断熱のために家を建てる」方が見受けられるからです。 ソト断熱VSウチ断熱、高気密VS・・・・・ のような議論ではなく、 ここでの「断熱」の目的を「暖かく(涼しく)快適な空間を省エネルギーで構築するため」と定義します。 そこで断熱を、 ① 断熱材やサッシの性能など仕様的アプローチ ② 間取りや窓・庇の位置など設計的アプローチ の2つで考えます。 ①仕様的アプローチ お客様によく聞かれる質問の一つが「断熱材は何を使っているんですか?」という言葉です。 やはり、断熱は気になる家の性能の一つだと思います。 しかし、断熱材だけで家の温熱環境が決まるとは決して思いません。 例えば、いくら高性能(熱伝導率の低い)な断熱材を使っていても、間違った施工・隙間だらけの施工ではその効果は発揮できませんし、その厚みをどのくらい施工するかでも断熱性能は変わります。 断熱性能が高ければ高いほど、厚みが厚ければ厚いほど、外壁の中で起きる結露(壁体内結露)の発生危険性は高まります。 実際の現場では断熱材は筋交いやコンセント、ボルトなどで断熱欠損だらけになります。 つまり、 断熱=断熱材の性能×厚み×現場施工精度 となり、どれが欠けても十分な断熱は得られません。 また、断熱性だけでなく、蓄熱性(熱容量)や遮熱性なども家の温熱環境を決めるのに重要な要素になってきます。 そもそも、家の熱のほとんどはサッシ・ガラスから逃げていきます。 断熱材以上に、サッシ・ガラスの断熱性能が大きな要素となります。 ②設計的アプローチ 断熱性能ばかり重要視されますが、同じかそれ以上に大事なのが、設計による断熱へのアプローチです。 たとえば、いくら断熱性能を高くしても、玄関や勝手口を開けるたびに家じゅうに冷気がまわってしまうような設計では家の断熱性能は発揮できません。 一部屋ごとの個別暖房では、冬の夜にお風呂やトイレに行くのに「外」へ行かなければなりません。 加えて、暖房していない部屋の結露(窓の結露も壁体内結露も)は増えます。このような家では、冬のヒートショックなども心配です。 断熱性能は冬にどれだけ熱を貯め込むか、だけではなく、夏の涼しさも重要です。 また、人間は、「空気の温度」だけで暑い寒いを感じるのではなく、空気の温度と、床や壁、天井などから発する「輻射熱」を足して二で割った値、つまり平均値で感じます。 夏の暑い日に窓を全開にして空気が常に入れ替わっているとしても、壁や屋根の温度が高いか低いか、で室内の快適性は驚くほど違います。 夏であれば屋根にきちんと遮熱性能や断熱性をもたせているか、軒の出をきちんと出して、壁やサッシに必要以上に太陽光が当たらないような設計になっているのか、なども影響してきます。 軒の出は単なるデザインではないんですね。 要約すると… ☆心地よさは数値だけでは決まらない! ☆数値と合わせて設計が大切! 快適で気持ちいい、そして省エネルギーの暮らしが見えてくると思います。 BACK