01設計と間取り子ども室の設計 子ども室に、どんなイメージをお持ちですか? 南向きの明るい2階、4畳半や6畳の閉ざされた個室。そこには学習机とベッドが並んでいる……。 「子ども一人ひとりに専用の個室を」と願うのは、親御さんとしての自然な愛情かもしれません。 しかし、私たち「建築工房 零」は、いわゆる「子ども室」のことを「子の間(このま)」と呼び、一般的な個室とは異なる捉え方をしています。それは、家づくりにおける「本質的な価値」を見つめ直した結果たどり着いた形です。 「ぶどう型」ではなく「りんご型」の家づくり 私たちの設計のベースにあるのは、個室を廊下でつなぐ「ぶどう型」のプランではなく、大きな一つの空間を必要最小限の間仕切りで区切っていく「りんご型」のプランです。 多くの家づくりが「あれもこれも」と機能を追加する「足し算」になりがちなのに対し、私たちは不必要なものを削ぎ落とす「引き算」の視点を大切にしています。なぜなら、引き算をすることで、その家族にとって本当に大切な「暮らしの中心」が見えてくるからです。 特徴① つながり:家族の気配が「安心」と「情緒」を育む 「りんご型」の家は、「だんらんの間(リビング空間)」も「子の間」も、縦にも横にもゆるやかにつながっています。 1階のキッチンにいる親御さんと、2階の「子の間」にいるお子さんが、声や物音、匂い、そして光を通して常に存在を感じ合える、つながりを感じられる設計です。 このつながりは、例えば子どもが今、どこに居て何をしているかを知ることができるという「安全確認」に留まりません。 家族の気配を感じながら過ごす日常は、心の安定や豊かな情緒を育む土壌になります。「家は、家族が幸せに導かれるための場所である」。私たちはそう考えています。 一方で、「受験勉強や思春期にはプライバシーが必要では?」という懸念も当然あります。その答えが、2つ目の特徴である「可変性」です。 特徴② 可変性:「変わるもの」に執着しない知恵 家づくりにおいて大切なのは、「変わるもの」と「変わらないもの」を分けて考えることです。 ・変わるもの: 家族構成、子どもの成長、趣味、家電の進化など。 ・変わらないもの: 太陽の動き、心地よい風の抜け方、冬の暖かさ、家族の仲良く暮らしたいという願いなど。 「子の間」は、まさに「変わるもの」の代表格です。 新築時に完璧な個室を作っても、お子様がそこで過ごす期間は人生のほんのひととき。独立した後は、使いにくい「余った部屋」になりがちです。 成長に合わせた「子の間」の七変化 私たちが提案するのは、将来の変化を余白として楽しむスタイルです。 幼少期: 家族みんなで広々と使う「大空間」。:お母さんやお父さん、兄弟姉妹といっしょに使えるように広々としたスペースを用意しておく。 学童期: 家具などでゆるやかに仕切る「自分の居場所」。:置き家具などで柔らかく仕切り、自分のスペースをつくってあげる。 思春期: 建具や簡易壁でプライバシーを守る「個室化」。:建具やカーテン、簡易的な壁をつくって「個室化」してあげる。 独立後: 壁を取り払い、再び「大きな広間」へ。どんな暮らしにも対応できる空間に。 最初から作り込みすぎず、変化に対応できる余裕(可変性)を持たせることで、建物の寿命を延ばし、何十年先も満足できる住まいになります。そもそも、家づくりを考えスタートする時点で、家族が何人になるのか、生まれた子どもの性別はどうかなど、未来のことは分かりませんから、あたり前の考え方のようにも思えます。 家づくりは「手段」であり、目的は「暮らし」 さて、私たちの提案する子ども室「子の間」について、説明をさせていただきました。 これは、どっちが正しいとか間違っている、という話ではありません。住まう人の価値観であり、子育てを含む生き方についての方向性の話なのだと思います。 「断熱」や「耐震」は非常に重要ですが、それ自体が家づくりのゴールではありません。それらはすべて、「家族が楽しく、心地よく暮らす」という目的のための「手段」です。 どんな人生を、どんな価値観で送りたいか。家づくりは、ご家族のこれまでの生き方と、ご家族のこれからの未来について考えるきっかけであり、意志表示であるのかもしれませんね。 「子の間」という提案を通じて、ご家族の未来を一緒に描いていければ幸いです。 つくり手として、その責任の重さを噛み締めながら、これまでもこれからも、一棟一棟の暮らしづくりに向き合っていきます。 BACK