間取りという考え | 建築工房 零

01設計と間取り間取りという考え

家づくりにおいて根底にあるのはその生活であり、その生活の場であるのが住まいという器です。
たとえるのなら、茶碗という器を使ってその中に盛られたご飯を食べる。
目的はあくまで茶碗ではなくご飯。茶碗はその目的を達するための手段(道具)でしかありません。しかし、茶碗がないとご飯を食べることはできません。その茶碗はどのようにご飯を食べるのか、という考え方に基づいて選ばれ、ご飯の食べ方、時にはその味にまで大きな影響を及ぼします。とくに、幼少期・成長期の子供にとってはどんな器で育ったのかが人間形成に大きな影響を及ぼします。

元来、間取りとは「間」を「取る」と言うように、一つの大きな空間から必要な「間」を区切っていくのが本来の意味です。(下図参照)

戦後、「個」が尊重されすぎ、プライバシーの名の下に生活する用途別に独立して閉じた部屋を設け、その部屋を廊下を挟みながら継ぎ合わせていく家づくりが主流となりました。 「家族の人数+LDK」と言う考え方です。(下図参照)

しかしその結果はどうでしょう?
家族の距離は遠くなり、各部屋で好きなテレビ番組をみる。廊下で区切られた和室は年に数度しか使わない部屋となり、子供が独立した後の子供部屋は無駄なものを詰め込む物置となっている。結婚や死別、独立などの家族の生活の変化に対応できず、わずか平均30年で取り壊される家づくりの始まりです。

日本人は昔から「間」の使い方がとても上手で丁寧でした。襖で空間を用途に合わせて区切り、必要な「間」を作り出す。また、同じ「間」が使い方で「茶の間」「寝室」「応接間」「家事室」・・・・様々な用途に使われる。(現在の住まいにおいては子供室も同じように年齢にあわせて使い方を変化させられるような間取りは可能です。)
互いへの丁寧な思いやりと尊重、愛情があったのでしょう。
家の中だけではなく、地域との深いつながりが「縁側」という形で具現化されてもいました。

しかし、現代の生活において日本古来の住まいの姿がベストだとはいえません。
その両極にある住まいの姿においてどちらが正しくてどちらが正しくない、という判断ではなく、そこから学ぶべき事がたくさんあるのではないでしょうか?

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