01設計と間取り和室の設計 「和室」と聞いて、皆さんはどのような空間を思い浮かべるでしょうか。 現代の住まいでは、フローリングの洋間が主流となりましたが、その中で畳を敷き、和の趣を設けた空間を私たちは「和室」と呼んでいます。 単なる「畳のある部屋」としてではなく、日本人が古来より大切にしてきた「空間を使いこなす知恵」が詰まった場所として、その設計思想を紐解いてみましょう。 和室の最大の特徴は、「多用途性(汎用性)」にあります。 椅子やテーブル、ベッドといった大きな家具に用途を固定されないため、一つの空間が時間や状況に応じて姿を変えます。 日中は: 子どもの遊び場や、家事の合間のくつろぎスペース 来客時は: おもてなしの客間 夜や将来は: 寝室(主寝室) このように、限られた面積の中で何役もこなせるのが和室の合理的な美しさです。 下に、以前折込チラシなどでよく見る間取りを示します。 よくある間取り図(建売住宅など)では、玄関横に独立した和室が配置されているケースを多く見かけます。 しかし、この構成だとリビングと分断され「予備室」的な役割になりがちです。年に数回の来客のためだけに、南側の光が入る特等席が普段は閉め切った「納戸」のようになってしまう……。これは非常にもったいない設計だと言わざるを得ません。 続いて、私たちの設計を示します。 建築工房 零/アオバクラフトでは、和室を孤立させず、リビングの一部として機能させる設計をしています。 例えば、襖を鴨居ごと高く設計することで、開け放した際に見切りのラインが消え、視線が奥まで抜けるようになります。 これにより、キッチンで料理をするお母さんと、和室で昼寝をする赤ちゃん、リビングでくつろぐお父さん。家族が別々のことをしていても、同じ空気感の中にいる心地よい距離感が生まれ、つながりを感じられます。 普段はダイニングテーブルで食事を取っていても、たまには茶の間として和室を利用するのも良いでしょうし、親御さんやお友達が泊まりにきたときには、襖やロールスクリーンで仕切って、客間としても使えます。 自分達が年をとって足腰が不安になった時には二階の主寝室からこの和室に移ることも可能です。 無駄なスペースを削ぎ落とし、一つの空間を多目的に使い切ること。 それは単なる「節約」ではなく、「空間の質を深める」という考え方です。 坪数を抑えつつ豊かな暮らしを実現することは、建築コストの最適化(ローコスト)につながるだけでなく、将来のメンテナンス負担を減らし、環境負荷も抑える「エコロジー」な選択でもあります。 今の暮らしを愉しみ、同時に30年後、50年後の変化にも柔軟に応えられる。 そんな「可変性のある和室」こそ、私たちが大切にしている設計哲学のひとつです。 BACK