eps.17 零の家で過ごした12年 | 建築工房 零

eps.17 零の家で過ごした12年

宮城県仙台市泉区

築12年の大屋根のすまいを訪ねて

泉区南光台にある、築12年の大屋根の住まいを訪ねた。飴色に色づいた床と背の高い庭木が、Yさんご家族の丁寧な暮らしぶりを物語る。海外のお土産というクッキーと、上品な桃の香リの紅茶でもてなしてくれた。
Yさんの家づくりは、「国産材をふんだんに使った、職人さんが手仕事でつくる木の家に住みたい」という想いから始まった。 材料だけでも、手仕事感だけでもなく、それが両立していること。さらに、デザイン性も兼ね備えていると感じたのが、唯一零のすまいだったという。開業1年目でまだまだ実績もない工務店だったが、「ここで建てよう」と夫婦で話し、家づくりを進めていった。

家族をつなげる広がり間取りの家づくり

「家づくりの思い出話は止まらなくなる~」と笑うYさん。

庭づくりの提案含め、納得できる提案が多かったと思い起こす。2階は夫婦と子ども二人のそれぞれの個室が設けられたが、大事にしたのは”各部屋の設備を増やさない”こと。テレピ線、パソコンのランケーブルも1家に1カ所にまとめ、部屋にこもリすぎないつくりとなった。長男が就聴活動をしていた時も、家族共有のデスクスペースでエントリーシートや面接の準備をした。冬の暖房は薪ストーブ1台のみ。

各部屋の扉を半分開ければ十分あたたまる。 子どもたちは「自分の部屋ではあるけれど、独立しすぎていない感じがちょうど良かったかな」「まあ、思春期と言っても数年間だけですから」と笑った。

子供たちは それぞれの道へ

この春関東の大学を卒業し、卒業旅行では好きな史跡を辿る一人旅をしたという長男のH君。

中学生の時に起こった東日本大震災がきっかけで、「地元のために働きたい」と決意した。

「きっかけが震災なのは、少し複雑ですけどね」と苦笑いを浮かべたH君は、4月から仙台で就職し、働き始めた。帰宅し、毎日ごはんとお風呂が用意されていることに、「本当にありがたい」と口にするそうだ。
成人を迎えたばかりの長女Mちゃんは、関東の大学に通い、そこで多種多様な経験を重ねている。内閣府主催の「世界青年の船」という企画で、11か国の青年たちとオーストラリアやソロモン諸島などを廻る2か月の旅をした。携帯は使えず、公用語は英語。アウェーな環境に自ら飛び込んだ。「外の世界を知れば知るほど、身近な地域が盛り上がっていることに気づいたんです。 今は面白い取り組みをしている日本の企業や自治体にも興味があります」と、目をキラキラさせて話してくれた。

これからもご縁を大切に

「零との出会いも、子供たちの進路も、庭木の根付く根付かないも、全部ご縁ですよね」

玄関の土壁を家族で塗ったり、広い庭の落ち葉掃除をしたり、冬は薪ストー ブに火を入れたり。
毎日の暮らしの積み重ねが、家族と共に過ごす家自体への愛着にもなっていく。
「零との出会いも、子供たちの進路も、庭木の根付く根付かないも、全部ご縁ですよね」と話す奥さまの言葉が、じわっと優しく染み渡る。
「また家族みんなで暮らせたらなって娘にはいつも言うんです」とお茶目につぶやいた。
さらに年月を重ね、思い出話と近況報告に花が咲く。
そんな日が待ち遠しい。

Yさんの家づくりの素となった模型とプラン図

12年前の建築中、お子さん二人は小学生。打合せ中は近くの公園で遊び、現場では大工さんからのこぎりの使い方、カンナのかけ方を教えてもらった。

「芽吹いたりするのを見ると、自然の息吹を感じて嬉しくなる」

英国風の庭ではなく、雑木林のような庭にあこがれがあった。 12年で一番変化を感じる部分は、庭の木の成長が見られたこと。 レンギョウの黄色い花が咲き、ソメイヨシノ、ジュンベリー、ヤマザクラと開花が続いていく。 「芽吹いたりするのを見ると、自然の息吹を感じて嬉しくなる」とYさん。

2階ホールにある共有のデスクスペース。

屋根の傾斜で天高が低くなった落ち若いた書斎空間。

家族でDIYで仕上げた土壁の玄関ホール。帰ってきた家族を優しく迎え入れる。

「意識したことはないけど、自然との距離は近い気がする」

家を建てるなら、薪ストーブは絶対に入れたいと思っていたキャンプ好きなご主人。

毎年の冬を待ち遠しく思っているそうだ。 さらに、庭に自生するローズマリーやローリエは、薪ストーブ上で煮込む料理にも大活躍するそう。 「意識したことはないけど、自然との距離は近い気がする」と子どもたちは話す。

当時の記憶がよみがえる家づくりのアルバムーーYさんが家づくりをしていた当時の零は、スタッフは3人。設計担当の小野、ムードメーカー担当の小野亜弥、模型づくり・遊び担当の菊地と、家づくりのアルバムに書いてあった。スタッフの名前や当時のエピソードを色濃く覚えている二人に驚かされた。

竣工時のY様邸の外観。シンボルツリーのケヤキがすまいを彩る

金物を使わず、木と木を長いまま組み合わせていく木組みの構造。

庭のソメイヨシノが満開を迎えていた。

周りから「常緑樹にしたら?」と言われても、落葉したり芽吹いたり、その時々の表情が見えるほうが楽しいんだと話してくれた。

DATA

宮城県仙台市泉区/木造一戸建て/Y様邸

撮影・取材:2019年4月(一部建築当時の写真有り)


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