施設建築 施設建築 木造でつくる、地域にひらかれた病院建築 ― 医療と子育てを、木の温もりで包み込む ― RC造が主流とされてきた病院建築において、本施設は木造軸組工法を採用し、国産無垢木材を積極的に用いた医療空間として計画されました。 無垢材と自然素材がもたらすやわらかな空気感は、子どもや保護者の不安を和らげ、訪れる人に安心感を与えます。 プロジェクト概要 施設用途:病院(小児・病児保育併設) 構造・工法:木造軸組工法 主な使用材:国産無垢杉材(構造・床) 規模:延べ床面積 約390㎡/2階建 設計・施工:建築工房零による一貫体制(社員大工による施工・現場管理) なぜ、木造を選んだのか 病院建築では、防耐火性や設備計画の合理性から、RC造が選ばれることが一般的です。 本施設ではその前提を踏まえたうえで、建物規模や運営形態、地域との関係性を丁寧に整理し、木造であることが最も合理的であるという結論に至りました。 無垢木材と漆喰に包まれた空間は、医療施設に求められる清潔性を確保しながらも、冷たさや緊張感を和らげ、特に小児医療や病児保育において、子どもと保護者が落ち着いて過ごせる環境を生み出しています。 構造から空間まで、木を使い切る 本施設では、床材だけでなく構造材にも国産無垢杉材を使用しています。 木材はすべて近郊地域から調達し、適切な手入れや間伐を前提としたスギ材を活用することで、森林循環に寄与するカーボンニュートラルな建築を実現しました。 また、壁には漆喰を採用し、無垢木材との組み合わせによって、自然素材ならではの調湿性や肌触り、視覚的な温かさを建物全体で体感できる空間としています。 設計と施工がつながることで生まれる建築 本施設の設計・施工は、地域工務店による自社一貫体制で行いました。 施工および現場管理を担ったのは、自社の社員大工。設計意図を現場で正確に汲み取り、細部まで落とし込むことで、精度の高い施工を実現しています。 また、電気配線を壁内に埋め込まない仕様とすることで、将来的な修繕や改修にも柔軟に対応可能としました。 これは「建てたあとも直しながら使い続ける」ことを前提とした、長寿命な病院建築のための工夫です。 写真で見る空間構成 片流れの大屋根と、黒と木部を組み合わせた外観が印象的な建物。 軒のかかったポーチと山採りの植栽が、街並みにやさしく溶け込みます。 外壁と同様の木板張りを施した待合室。 社員大工による造作カウンターと無垢杉の肌触りが、訪れる人を迎え入れます。 大屋根の形状を活かし、玄関から待合室へと視界が広がる構成。 2階カンファレンスルームは、防音性を確保しつつ、吹抜けを通して階下とのつながりを感じられる空間としています。 社員大工による造作カウンター 医療と子育てを支える地域の拠点として 隔離診察室やドライブスルー受付を備え、病児・病後児を受け入れる「しまうま保育室」を併設。 医師・看護師・保育士が連携し、子ども一人ひとりの状態に寄り添ったケアを行います。 この建物は、特別な材料や工法に頼るのではなく、地域の大工がつくり、地域の人が使い続け、手を入れながら育てていく病院です。 医療と子育てを支える場として、これからも地域に根付き、永く使い続けられる建築であることを目指しています。 BACK