eps.15 アアルトに憧れて | 建築工房 零

eps.15 アアルトに憧れて

泉区福岡

自然の中にある「癒しサロン」

水晶の器が奏でる幻想的な音色を、柔らかな日差しが包み込む―。
泉ヶ岳に向かう県道を走っていると、丘の上に赤い板貼と白い外壁が印象的なT様邸が見えてくる。そこは住宅、一級建築士であるご主人の事務所、リンパマッサージやセラピースクールを経営している奥様のサロンを兼ねており、イベントなどもたびたび開催されている。この日はセラピストのTARAさんが「クリスタルボウル」という音浴のセラピーを開催。ストレスの軽減や潜在能力の活性化、ヒーリング効果が期待できるのだそう。元々、神奈川県の葉山で暮らしていたTさんご夫婦だが、ご主人の転勤で仙台へ。そのときに感じた「のんびり」とした雰囲気が気に入って、移り住むことを決意した。

アルヴァ・アアルトに憧れて

「一軒家を建てるなら、20世紀を代表するフィンランドの建築家『アルヴァ・アアルト』の作品集で見た白い家 のようにしたい」

建築士のご主人には夢があった。一軒家を建てるなら、20世紀を代表するフィンランドの建築家「アルヴァ・アアルト」の作品集で見た白い家 のようにしたい。「L字型の平屋のすまいで、屋根は高くして欲しい、床材もPタイルを使って」など、柱に塗料を塗るかどうかで意見が割れるなど、時には設計担当者との意見が折り合わないこともあったが、最終的には互いの意見を尊重しながら、それぞれの良さを生かす形で仕上がった。「イメー ジに合った壁面を、低価格で実現できるよう、設計士の方には奔走していただいた。とても感謝している」と、今ではその出来栄えに満足している。自然あふれるこの地域に馴染むよう、突出しないデザインも心がけた。

長く一緒に住むために

「夫婦であってもプライベートは大事にしたい、それが長く一緒に住むためには必要なことじゃないかと思います」

「夫婦であってもプライベートは大事にしたい、それが長く一緒に住むためには必要なことじゃないかと思います」。ご夫婦ともに自宅と仕事場を兼ねているからこそ、一定の距離感を大切にしている。だんらんの間にあるキッチンは、料理好きのご主人の希望もあり、業務用のコンロが設置され、フライパンも鉄製の物を使用する本格派だ。料理は ご自身の仕事でもある設計と違って、結果がすぐに出て、反応が聞けるところが楽しい。「仙台に来て、性格が変わりました」。勤め先を早期退職し、自営業に転じたご主人。なにより自分の時間を大切に出来ることがうれしい。現在は泉ヶ岳へ向かう道中にれんげの花を植えることで無農薬米の推進を行う「泉ヶ岳れんげの里」を実施。「れんげ米」をここの名産品にしたいと意気込む。「この辺りには面白い方がたくさん住んでいて、それに自然が好きな方ばかりなので、気が合いますね」。自然と仲間に心から癒される。

自然の恩恵を肌で感じる毎日

「今のような生活を始めたきっかけは、京都大原の里山に住むベニシアさんの暮らしに憧れたから」

「今のような生活を始めたきっかけは、京都大原の里山に住むベニシアさんの暮らしに憧れたから」と奥さまは話す。ハーブを育て料理に使うなど、自然の恩恵を受けて生活しているベニシアさん。「同じ志で生きているつもりですが、自然の中での生活は厳しさも教えられますね」と笑う奥様。厳しい麓の寒さに耐え、色づく春まであと少し。春の訪れが待ち遠しい。

建築士と協同して形づくられた住まい

医療設計が専門のご主人。カフェの設計などをしている零との家づくりを決意。自身ですまいの基本プランを練り、それを零の設計士とすり合わせながらの建築になった。零の設計理念や素材を生かしながら、自分たちらしい住まいを形づくっていった。

空間で気持ちを切り替える

サロンとご家族の生活スペースを隔てる飛び石。ここを歩いて渡ることで、気持ちが切り替わる。ミニチュアシュナウザーの「夏海」と「千太」は自由に行き来しており、癒しを提供するサロンに一役買っているようだ。

サロンの壁には、空を望む「空の窓」と目線の高さのみを切り取る「山の窓」が。

自然と笑顔のほころぶ空間に

自然のなかに住む健康への効果を実感できる場所。イベントのあとで交わすおしゃべりも癒しのひとつ。サロンに集まる仲間たちは、笑顔になって喜んでくれる。
これからも自然の恩恵と共に。

アンティークの調度品が好きな奥様。サロンには多くの品々が並んでいる。「リラクムーン」 は、心と体のデトックス、リンパケア にエステ、ファスティングなどを通し、自然治癒力を高める。

DATA

所在 / 泉区福岡
竣工 / 2016年9月
設計 / 石田 文子(当時二級建築士・現一級建築士)
構造 / 在来工法
延床面積 / 45.50坪
敷地面積 / 294.68坪


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