eps.12 動物と共に暮らす | 建築工房 零

eps.12 動物と共に暮らす

白石市大平

母屋のとなりでスローライフ?

白石市の郊外を抜け、福島との県境に程近い山間部。高速道路の高架下に車を停めると、人懐っこい黒柴のゴロに、お腹いっぱいに草を食んでいたヤギのメイが出迎えてくれた。

ご主人の両親が住む母屋の隣に建てられたM様邸は双子の息子を含め4人+2頭の6人家族。元々は関東に住んでいたが、結婚を機にあこがれのスローライフを送ろうと地元へ。候補地をあれこれと探していたが、里山の景色も美しく、土地も十分に残っていた実家の隣に建てることを決意。幼稚園からの幼馴染でもあった奥様の実家も近いことから、新居は二人で気ままに暮らせる家をイメージしていた。ところが新居の出来た翌年、双子が誕生。スローライフが一変。賑やかで楽しい毎日となった。

子供たちがいつでも目の届く場所に

二人暮らしを想定し、母屋も隣にあることからお風呂のないM様邸。生活空間もコンパクトにまとめられていたが、そのおかげで子供たちを常に目の届くところで遊ばせることができるようになった。最近は誰にでも人見知りせずニコニコと笑顔を振りまくようになった子供たちは動物にも物怖じしない。ところが黒柴のゴロは二人にやきもちを焼き、敬遠しているのだとか。また、子供たちが歩き回るようになったので、生活スペースになっている小上がりのだんらんの間に木製のケージを立て、その中で遊ぶようになった。これからますます行動範囲が広くなることを考え、薪ストーブを使用する冬までには、子供たちの安全を考慮した配置に変える予定だ。

山中の巡回が朝の日課に

全国的にも甚大な被害が出ている獣害問題。ここ白石でも例外ではない。ご主人はその問題に取り組もうと、自宅とその周辺の農作物を食い荒らすイノシシ用の箱ワナを仕掛け、毎朝見回りをしている。また、ご主人は各所に動体監視カメラを設置し、山の生態にも留意している。それは福島県などから様々な野生動物が白石に移ってきているためだ。獣害は他にもタヌキ、猿、狐や熊などがあり、イノシシだけでも年間1500頭ほど処分されているが、その分イノシシも子を育て増えているので、結果的にはほとんどその数は変わらない。狩猟免許を取得したので、自宅に子供部屋を増築する際には、猟銃を仕舞うスペースも作ってもらう予定である。こうしたご主人の働きにより周辺の被害はほとんど見られなくなったが、その分、ご主人はヤギの小屋だけがなかなか完成できないことに気を揉んでいた。

いつも家族が満足できる空間を

子供の頃からお風呂などで使用する薪を割っていたというご主人。「学校から帰ると毎日薪を割っていたので薪割りは得意です。薪ストーブの暖かさも知っていましたし、むしろ石油ストーブの匂いが苦手なので今の家をとても気に入っています」。ドイツとスリランカに住んでいたことや、登山部に所属していた経験から、自然の良さ、厳しさも知っている。その知識を生かしながら、野生動物との共存を考える。「ウリ坊って、とってもかわいいんですよ」。その声に、くやしさと悲しみが滲んでいるようだった。

だんらんの間から玄関側を望む。薪ストーブはコンパクトだけどパワーのあるTRUE NORTH。

ロフトは現在ご主人の寝室に。ロフト部分の壁に塗られた珪藻土はご夫婦のDIY。ハンドメイドならではの凹凸が柔らかい日差しを演出している。

家族の成長に合わせて変化する室内

ロフトに取り付けられた階段は交互に切込みが入っているので斜度が急でも容易に登ることが出来る。また取り外し、別の場所へも付け替えることが出来るので生活のスタイルに合わせた使い方が可能。

深刻な獣害問題を何とかしたい

宮城県内でもっとも被害の大きいイノシシによる食害の被害額は1億円程度。担い手のいない農地が荒れていくことでイノシシの行動範囲がどんどん拡大しているのが原因のひとつ。動物との共存を模索する。

本音のやりとりで理想の空間に

家を建てる際、最初は広い山小屋をイメージしていたご主人。しかし、設計の担当者とのやり取りを経て、狭い空間を広く使いながら予算を抑え、すべてを決めず流動的に増改築を行えるように変更。そのおかげで出産など家族形態の変化にも十分に対応出来る家づくりを実現した。

現在は収納になっているスペース。子供たちの成長に合わせて子供部屋にする予定。

コンパクトにまとめられたキッチンは子供たちのいる小上がりのすぐ横にあるので、家事も安心して行える。

M様邸の外観。中央がピロティになっており、必要に応じて増築もできる可変性のある間取り。

DATA

所  在 / 白石市大平

竣  工 / 2015年7月

設  計 / 福井 素子(一級建築士)

構  造 / 在来工法

延床面積 / 10坪


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