eps.5 一杯のコーヒーから | 建築工房 零

eps.5 一杯のコーヒーから

太白区向山

淹れたてのコーヒーで手厚いおもてなし。カウンターさばきが板についている喫茶店のマスターのようなご主人。

喫茶店のような 空間を再現

雨続きの夏が終わり、澄んだ空気が、足早な秋の訪れを教えてくれた9月、太白区の高台に建つ零の家を訪れた。南側の眺望が心地良く開放的なすまいは、高低差のある変形地に建つ。1階と2階を繋ぐ階段の中腹に玄関がある、特徴のある間取りだ。

すまい手のTさんご家族はあたたかいコーヒーで迎えてくれた。ご主人がコーヒーと出会ったのは高校生の時。近所の喫茶店に通いコーヒーを飲んだ。それを知ってか、母親が知人の使わなくなったミルをもらってきた。それをきっかけに豆を挽いて自分で淹れたコーヒーを飲むようになった。Tさん宅では、キッチンと向かい合うように設置されたカウンターを囲み、団欒が始まる。このカウンターは、喫茶店のカウンターをイメージして設計したもの。昔から好きで通った喫茶店を、暮らしの中に再現した。

正直な生き方 素直な暮らし

豆は、ご近所の自家焙煎屋さんなど、お気に入りが数件あり、その時の気分で購入している。出先でちょっと飲むときは、意外にも某コンビニ“S”でも。「うんちくよりも飲んでうまい!それが一番!」と語った。

楽しみながら 工夫を凝らす

Tさん宅の暮らしには、冬のお楽しみアイテムがある。それは「寝袋」だ。もちろん寒さを耐え凌ぐためのものではない。冬が近づくと人数分の寝袋が姿を現す。Tさん宅では、暖房に薪ストーブと空気集熱式ソーラーシステム「そよ風」を使う。天気の良い日は真冬でもそよ風だけで十分あたたかい。太陽の出ていない時間を薪ストーブで補うスタイルだ。自然エネルギーといえど、無駄に垂れ流し、浪費して良いものではない。薪ストーブは、少しづつ大事に焚く。夜が更けるとストーブの余熱と寝袋で過ごすそうだ。「これがまた最高なんです」とご家族全会一致。なるほど、そんな楽しみがあったとは。薪の調達は、近所の神社や解体現場、職場近くの造成工事の現場などから、原木や木材等を譲ってもらってくるそうだ。そのため一つ一つの薪にも愛着がわき、大切に焚いている。地域の方々とのつながりもより強くなった。そのうえ、常にアンテナを張っているため、薪が尽きたことは一度もないそうだ。

当たり前にある豊かな暮らし

しっかりと自分たちの手の中に暮らしが根付いているTさんご家族。築5年半の零の家は、家族の暮らしに溶け込み、すっかり家族の一員になっていた。

キッチンの床は一段低くなっていて、カウンターに座る家族と同じ目線で過ごすことができる。

ご主人が高校生時代から使用しているミル。長年使ってきたミルは、良く手になじんでいるようだった。

一番人気は、ストーブ前ソファ席

Tさん宅にはいくつかの寛ぎスポットがある。その中でも家族全員が口をそろえて好きな場所に挙げるのは「ストーブ前ソファ席」。冬はストーブに当たりながら、夏は心地良い風を感じながら。薪が足りなくなってくると、慌ててこの土間スペースで薪つくりなんてことも。

奥の和室は、風通しが良く、寝転ぶと高窓から空が見えて奥様お気に入りの場所。

Tさん家族の朝は、必ずご主人が淹れるコーヒーで始まる。夫婦でキッチンに立つ姿は、仲の良い家族の象徴でもあるように思う。

縦の広がりを活かした 隠れ家的空間

建物の真ん中に吹抜けが有り、縦の広がりをうまく使うことでどこにいても家族の気配を感じられるすまいになった。特にロフトでは、ハンモックに揺られながら本を読んだり、昼寝をしたり。家族の気配を感じられることによる安心感が、よりリラックスさせてくれるようだ。

ロフトにあるご主人の秘密基地。1坪程度の空間に、男のロマンが詰まっている。

高校受験生の長男Aくん。自然素材の健やかな空気は集中力を増してくれる?野球に陸上にスポーツで鍛えた集中力に拍車がかかる。

Tさん宅の薪棚はこれだけ。大切に少しずつ焚くのがTさん流。庭の気持ち良いスペースを有効に活用するために、最小限を保っている。

高台の立地を活かし、南側の眺望を暮らしに取り入れることが出来た。狭小且つ高低差のある変形な土地ではあるが、設計の力によって、健やかな暮らしを実現した。

ご主人の趣味のフィルムカメラで、建築中の現場を撮った写真。自動シャッターで30分おきに撮影されており、解体から家が建つまでの流れが記録されていた。

南側の外観は、色味の深まったウッドデッキとバルコニーが印象的。ここからの眺めも気持ち良い。

DATA

所  在/太白区向山
竣  工/2011年12月
設  計/小野 幸助
構  造/伝統構法・木組み
敷地面積/49.95坪
延床面積/31.12坪


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