
コラム『呼び覚ます建築』第2回・「例えば、自然とのつながり」

自然との距離感
前号から始まった「呼び覚ます建築」コラム。
今回のテーマ「自然とのつながり」について考えていきたい。
自然…改めて思うと、壮大かつ馴染みのある言葉だ。
それでいて、日々の暮らしでどれだけ自然を感じているのか?と問われると、正直ピンとこない。
それには、近代の家づくりの流れの影響があるのかもしれない。引用文を手掛かりに見ていこう。
……本来、住宅はそれが建つ地域、風土、文化と応答しながら、その地域でつくる生業でした。近代建築の登場以降、世界中に平等な建築空間をつくる動きが主流となり、空調設備技術がどこでも均質な室内環境をつくりだすことを可能にしました。現代の日本の住宅においても、それまで培われた地域や風土と応答する伝統的な知恵があるにもかかわらず、最新の技術を搭載したマシン化、カプセル化した住宅が増えています。その結果、住宅がいろいろな意味で、外部に対して閉じてしまいました。…(中略)太陽や風などの自然が持つ力は、人工的につくられた環境よりも心地よい面があるということがどんどん忘れられてしまいます。(山田貴宏著・『里山長屋を楽しむ』(学芸出版社)より引用)
なるほど。日本は南北に長い島国で、地域ごとに気候・風土は異なる。
そして、そこに適したすまいが建てられていたのだろう。
それが、全国どこでも〝最新技術を搭載した均一な住宅〟が建てられるようになり、プライバシーや安全性、快適性のために窓も閉めっぱなし、隣の人の顔も知らないという住まいが増えていったのではないだろうか。
(正直な話、アパート暮らしの私自身の住まいもそうである。)
日常で自然の恵みを享受するどころか、自然を感じる機会すら少なくなっているのが現状のようだ。
一方、非日常では、自然は再注目されているように思う。
キャンプや登山、マリンスポーツといった多種多様なアクティビティは、老若男女問わず支持されている。
さらには都市で楽しむグランピングや、農業体験・田舎暮らし体験なども、人気を呼んでいる。
日常から締め出された自然は、帳尻合わせをするように、非日常で求められている。
それを考えても、自然は人の営みには必要なのだろう。
人の心の中にある「内なる自然」
ここで、2組のすまい手さんの声を紹介したい。
Sさんは「朝になると、窓から太陽の光が入ってきて、目が覚めます。自分たちが家に合わせて生活しているみたいで」と話してくれた。
「家にいるとき、音楽はかけない」と話したのは、料理が趣味のEさん。
お宅にお邪魔すると、肉を焼くジュージューという音と香ばしい匂い、薪ストーブでパチパチと爆ぜる薪の音。
音楽やテレビをつけないことで、静けさの中でも、たくさんの音に囲まれていることに気づいた。
とても羨ましいと思った。
飾り気のない言葉と姿が、なんとも自然体だったからだ。
この連載を貫くテーマは、世の中に横たわる社会課題や、真の豊かさに対し、私たち家づくりに携わる者に何ができるのか。
建築という行為、もしくは建築物を介して、私たちは何を生み出していくべきなのか、ということだと思っている。
家づくりは、現状抱えている不満や不安、不快を解決し、より良く生きていくための手段だ。
もちろん間取りや予算、デザイン性、性能などの多くのテーマがあり、それを暮らしの理想像にひとつひとつ照らし合わせて、考えていく。
ぜひそこに、「自然とのつながり」というテーマも意識的に加えてもらいたい。
無垢の木を使うなどの素材選びかもしれない。
冬の太陽、夏のそよ風を活かす窓の設計かもしれない。
リビングからつながるウッドデッキを楽しむライフスタイルかもしれない。
仮に、すまい手さんからそうした要望の声が上がらなくとも、潜在的にはみな「それ」を求めている。
当たり前に自然とつながり、それにより得られる心地よさを感じることのできる暮らしを届けていくことが、私たち家づくりに携わる者の責務であり、喜びであると思う。
人が自然体でいられる空間には、何が必要なのだろう。
阿部 梢
【筆者プロフィール】
株式会社建築工房零 所属の広報スタッフ。東北大学4年生の時、同社インターンシップに参加。村づくりのプロジェクトにおいて、持ち前の明るさと行動力を見せ、その後入社。「森の親子ようちえん」という子育て・教育関連のイベントの立ち上げメンバーとして参画。現在は企画広報スタッフとしてチラシ、パンフレット、ホームページ等のツール作成、イベント企画・運営等に携わり、日々奮闘中。
※この文章は、『IECOCORO[イエココロ] 宮城で建てる注文住宅 』に掲載されている連載コラムの内容となっています。
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