
売れない、直せない、壊せない ~民事信託③~
絶賛子育て中、2歳児のイヤイヤ期にも少々飽きてきた、不動産事業部 高山です。
「パン食べる?」「いらない」
「おトイレ行ってみる?」「行かない」
「そろそろねんねしようか」「ねんねしない」
ないないづくしの毎日を、笑顔で乗り切るべく試行錯誤中です。
さて、前々回から、勝手ながらシリーズものとしてお届けしている「民事信託」。
第1回~第2回は、民事信託のひとつである「家族信託」を利用することで将来にわたって問題を解決できた父娘の事例をお伝えしてきました。
しかし。
少しでもそのタイミングを逃すとどうなるか。
今回は、イヤイヤ期どころではない、
本当に困った「ないないづくし」の事例を、ご紹介したいと思います。
あなたは最近、実家のお母さんが膝を辛そうにしてるのを知り、もっと暮らしやすくリフォームするほうが良いのではないかと考えていました。
間取りの変更なども加える比較的大規模なリフォームになりそうだということがわかりましたが、少しでも負担なく生活してほしかったのです。
・・・しかし、あなたのお父さんはちょっと、頑固者。
「今はまだ少し痛いくらいで普通に生活しているんだから、いいじゃないか。父さんだって元気だから、助けてやれるんだし」
と言って、なかなかうなずいてくれません。
何とか説得しようとするも、
「お前は心配しすぎだ。父さんも母さんもまだ元気なんだ」
ますます頑なになるお父さんと、
「私なら大丈夫よ。心配かけてごめんね」
気を遣うお母さんの間で、その場は引き下がるしかありませんでした。
しかし、何か月か過ぎ、お母さんから電話がかかってきます。
「なんだかこの頃、お父さんの様子がおかしいの・・・」
お父さんは、認知症を発症してしまったのです。
行政のサポートを受けて、お父さんは施設に入所することになりましたが、古い家に一人暮らしをするお母さんの負担はどんどん重くなっていきます。
「やっぱり、リフォームしよう」
そこで、再度リフォームの計画を立てることにしました。
ところが。
「リフォーム、難しいかもしれませんね・・・」
と言われてしまいます。
実家は、土地も建物もお父さんの所有。
リフォームも契約ですから、持ち主であるお父さんが契約することになります。
しかし、所有権を持つお父さんにはすでに、「判断能力」がないため、契約も、あなたに「委任」することすらも、できません。
家族のために必要なのに、家を直せなくなってしまったのです。
あなたは、それならばこの実家を売り、お母さんがもっと暮らしやすいところで生活できる資金にするのはどうか、と考えます。
しかし、答えは・・・お分かりですね。
売れない、直せない。
建物を壊すこともできず、修繕すら困難になってしまったのです。
このように、お父さん(所有者)の判断能力がなくなってしまったあとでは、あなたはもうその財産に対してできることが極めて少なくなってしまうのです。
その後どうすべきかというと選択肢は限られ、
前回ご紹介の「成年後見制度」を利用するか、お父さんが亡くなり相続が発生してから売却等を行うしか方法がなくなってしまいます。
それでも、成年後見制度を使ってあなたが後見人になれたならまだ良いでしょう。
しかし、後見人を決めるのは裁判所です。
立候補して必ずなれるものではなく、弁護士などの専門家が選任されることも多いのです。
その場合、弁護士や司法書士の先生方も業務として行うことになります。ボランティアではありません。
つまり、毎月決められた報酬(一般的には、2〜6万円とも言われています)をお支払いすることになってしまいます・・・
更に、その制度の目的は「本人のため」でした。
家を売却しようとする場合は、裁判所に許可をもらわなくてはなりません。
と、いうことは・・・
希望通りに土地や建物を処分することができるか確実ではないにもかかわらず、後見人への報酬が発生する可能性もあるのです。
そして、専門家が後見人に選出された場合は、その弁護士等が違法行為をしているなどの事情がない限り、交代は原則、認められません。
お父さんが亡くなるまで、後見人としての業務は続くことになります。
家族信託を利用できるうちに、あなたに任せてもらっていたら・・・
あなたは自分のハンコひとつで、家族のために最善の選択をすることができたはずなのです。
・・・いかがでしたか。
ちょっと怖い話でしたね・・・(゜o゜)
脅かすつもりはないのですが、
お父さんが元気なうちに対策を講じていたら。
と、とても激しい後悔をすることになりますよね。
以前にも何度かお伝えしてきましたが、ゼロノワ不動産へのご相談も
「今じゃないんだけどね」「そのうちなんだけど」
という前置き付きのものが少なくありません。
それでも、相談してくだされば、例えば上記のようなリスクをお伝えすることもできます。

しかし、何も知らずに時間が経過するということは、とても危険なのです。
以前、著名な作家さんが60代で運転免許の返納をされ、愛車を手放されたときの話を思い出しました。
「まだお元気なのに、よく決意されましたね」
というようなことを尋ねられ、
「年をとってからエネルギーの要ることなんてできないよ」
この答え。すごくかっこよくないですか?
「家族信託」も、契約です。
信頼する家族にとはいえ所有権も移転するわけですから、手放すような気持ちになってしまうかもしれません。
そこにはエネルギーが少なからず必要でしょう。
「まだ元気だから」と思うお気持ちも、わかります。
でも、そうではなく、「元気だからこそ」考えてみませんか?
家族のため、そしてご自身のために。
早すぎることは、意外と多くないものなのです。
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