
子ども室について 〔暮らしの目・技術の目〕

〇暮らしの目
皆さんは、子ども室にどんなイメージをお持ちですか?
南向きの明るい2階の部屋で、4畳半とか6畳のこじんまりとした個室に、学習机とベッドが置いてある、そんなイメージでしょうか。子ども達には一人に一部屋用意してあげたいと思うのも親心かもしれませんね。

個室の子ども部屋の例
零では「子ども室」のことを「子の間」と呼んでいます。呼んでいるというよりは、捉えているといった方が適切ですね。零の家のプランは、欲しい個室を集めて廊下でつなぐといった「ぶどう型」※図2 ではなく、大きな1つの空間をつくり、必要最小限の間仕切りでスペース(間)を取っていく「りんご型」※図1がベースになっています。もちろん子ども室を考える上でもこれが前提になってくるわけです。だから「子の間」なのです。

リンゴ型とブドウ型の概念図

りんご型の家づくり(零の家)の子の間
それでは、零が提案する「子の間」にはどんな特徴と良さがあるのか。大きく二つにまとめられると思います。
①つながりがある
②可変性がある
まず、「①つながり」とは、“りんご型”の家は、リビングやキッチンやダイニング(だんらん間)、寝室(寝の間)や子ども室(子の間)など、横にも縦にも空間がつながっています。こうした家での暮らしぶりは、家族が交わりながら、いつも気配を感じながら暮らすというスタイルになります。1階のキッチンにいるお母さんと、2階の子の間にいる子どもが、声や物音、風や匂い、そして光などで、いつもつながっているのです。このつながりは、相手が今、何をしているかを知ることができるといった安全安心のメリットに留まらず、心と心のつながりであり、愛情や情緒的なつながりを意味しています。こうした中で、子どもを育み、家族が幸せに導かれていく、零ではそんな風に考えているのです。

キッチンとつながる空間
一方、プライバシーを重視する独立した「子ども室」が悪いとは思っていません。現実的に、りんご型の家の子の間は、誰にも邪魔されず、閉ざされた静かな空間にはなりません。子どもが小さい頃は、子ども室をつくっても、ほとんどお母さんやお父さんと一緒にいることが多いですよね。でも、中学生や高校生になれば、性別も含めてプライバシーが欲しくなるのはむしろ健全なことですし、受験勉強なんてことにもなってきます。そんな時には、個室にしておけばなんて感じてしまうものでしょう。では、どうすればいいのでしょうか。
実は、その答えが、「②可変性」にあります。子どもが小さい頃は、お母さんやお父さん、兄弟姉妹といっしょに使えるように広々としたスペースを用意しておく。それを子どもの成長に合わせて、置き家具などで柔らかく仕切り、自分のスペースをつくってあげる。さらにプライバシーが必要になってきた段階では、建具やカーテン、簡易的な壁をつくって「個室化」してあげる。そんな具合です。その後のことも考えておく必要もありますよね。子ども達が、一生その家で暮らしていく場合もあるでしょうが、独立して家を出ていくことだって大いにあります。むしろこちらが主流でしょう。つまり、私の実家もそうであるように、子どもが独立した後の子ども室は、いい場所にありながらも、細々とした使われない部屋になってしまうことが本当に多いのです。それを防ぎ、建物の長いライフサイクルの中で、その時その時の家族構成やライフスタイルに追従し、暮らし方に間取りを合わせていけることは、長く続く暮らしの満足と、建物の長寿命にも寄与してくれるのです。そもそも、新築する時点で、何人子どもが生まれ、性別がどうでなど、未来のことは分かりませんから、あたり前の考え方のようにも思えます。

お子さんが小さい頃は、仕切らず、広々と使って…

分けたいなと思ったタイミングで、間仕切り家具で仕切ることも出来る。

もしお子さんが独立された後は、内職スペースをつくってもいいかもしれないし、

思いっきり趣味に振って、図書室にしてもいいかもしれない。
さて、零の提案する子ども室「子の間」についてご理解いただけたでしょうか?これは、どっちが正しいとか間違えているという話ではありません。住む人の価値観であり、子育てについての方向性の話なのだと思います。
家づくりは、ご家族のこれまでの生き方と、ご家族のこれからの未来について考えるきっかけであり、意志表示であるのかもしれませんね。改めて、つくり手の役割と責任の大きさを実感します。
(文・菊地史朗)
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