
私の本棚とお気に入り①


住まいには、そこにあるものから、その人らしさがにじみ出る。
日頃からそばに置きたいものから、気分を醸成してくれるものまで様々。
あの人は、どんな時に、どんなものに触れるんだろう。
ゼロクラフトグループの4人に聞きました。
菊地 史朗さんの本棚から
『旅をする木』(星野道夫 著/文藝春秋)

我が家のだんらんの間の大きな本棚には、絵本や児童書が1200冊以上並び、ボードゲームやカードゲームもぎっしりと積み重なっている。母さんの古道具屋で購入した本棚には、何やら不思議な力を纏っていそうな書籍が鎮座し、小心者の私には、それを覗き見する勇気も出ない。
息子の新しい本棚には、お気に入りのマンガと伊坂幸太郎。わが家は本当に沢山の本と一緒に暮らしている。
そう言えば、子ども達は、学年で一番本を借りて賞状をもらってくることがよくある。教室よりも図書室が、担任よりも図書の先生が好きなのだろう。その心地の良さ、分かるような気がする。
さて、自室はどうかというと、狭い部屋ながら3カ所に本棚があり、自分なりのカテゴリー毎に、整然且つ雑多に本が置いてある。そして、これまでに出会ってしまったガラクタの数々。
私自身は、読書は苦手で直ぐに眠くなる。それだけに、読書をしている知的であろう自分の姿に憧れを持ち、本を眺め、置き読を楽しんでいるのだ。いつも鞄に本を携え、傍らに本を数冊置いておくことが、心の安定と豊かさに繋がっているようだ。

私が一番好きな本はと質問されたら、きっとこの本だと答えるだろう。アラスカの自然とイヌイットの人々の中に身を置き、写真を撮り、文章を綴る。セスナ機で氷点下30度の世界に降ろされ、数週間先の迎えの時までをテントで過ごしながら、オーロラや動物たちが姿を現すのを待ち続ける。命がけのシチュエーションながら、彼の書く文章には、冒険家や環境活動家のような必死さや声高さは微塵もなく、穏やかでそして美しい。「人間の気持ちとは可笑しいものですね。どうしようもなく些細な日常に左右されている一方で、風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。きっと、その浅さで、人は生きてゆけるのでしょう。(旅をする木/新しい旅より)」。こんな風に、見るものの先に、常に生きることへのまなざしを持っている。私にとって、どう生きたいかを、気付かせてくれる本だと思う。
『アンジュール~ある犬の物語~』(ガブリエル・バンサン 作/BL出版)

文字のない鉛筆デッサンの絵本。走る車の窓から放り棄てられたアンジュール。必死で後を追いかけますが追い付けるわけもありません。そればかりか、走るアンジュールを避けようと大きな交通事故を引き起こしてしまいます。寂しさと孤独感。僅かな希望の光も持てない中、当てもなく彷徨い続ける姿に胸が締め付けられます。最後のページで出会った男の子も、もしかしたら大きな孤独を抱えていたのかもしれませんね。少しだけ上がったアンジュールの尻尾に、少しだけ救われたような気持ちになります。定まらない鼓動。怒りなのか、贖罪なのか、表現しようのない読後感。お勧めしたいような、してはいけないような絵本です。

『小山さんノート』 (小山さんノートワークショップ 編/エトセトラブックス)

こちらは、置き読専用。ホームレスの女性が書き残した80冊を超える日記ノート。それを8年かけて文字起こしした本です。たぶん読まないと思いますが、手元に置いておきたいと思って買いました。何なんでしょうね、この感じ。
『VINTAGE HOME』(エクスナレッジ)

古いものにどうしようもなく惹かれます。それゆえ、賢い買い物ができません。
エクスナレッジの本は、特に建築写真が美しく、映りようもない暮らしの営みが見えてくるようです。
『Hans J.Wegner’s 100 Chairs』(織田憲嗣 著/平凡社)

椅子が好きです。結婚前は、アパートの部屋をぐるりと一周できるほど所持していました。
特に、ローアングルで椅子の後ろ姿を眺めるのが好きです。少し変態です。
ファミリーホームBirdTree菊地 史朗
広告会社を経て、創業間もない建築工房零に入社。現職は、取締役相談役(非常勤)。
10年程前から里親としての活動を開始し、4年前には小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)を開設。現在、7名の子どもと暮らす。
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