家族が和み、語り合う時間を おおらかな自然と協奏するすまい | 建築工房 零
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家族が和み、語り合う時間を おおらかな自然と協奏するすまい

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家族の暮らしを包み込む大屋根のすまい

栗原市某所。

夏の暑さがやっと落ち着くと、一気に秋の風を感じるようになる。

陸橋を越えて、大屋根の木組みの住まいが自然の中におおらかに佇んでいるのが見えてくる。築12年のT様邸だ。

 

濃く色づく木製の玄関ドアを開け、訪問を待っていてくれたことに、心が温まる。

このT様邸は、建築工房零が創業から8年を迎えた頃、100棟記念として、盛大にセレモニーをさせていただいた、歴史のある住まいでもある。

 

社長が

「歴史も浅く、経営者が自分たちよりも年下の会社に、よく大切な住まいづくりを託してくださいましたね」

と問いかけると、

「不安はなかったかな。

約35年暮らした家の建て替えを考えたときに、木の家がいいな、と思っていて。

色んなメーカーや工務店を見たけれど、つくっている建物はもちろん、社長や会社の考えも含めて、いいなと思ってお願いしました。

薪ストーブのある暮らしが理想で、それが叶えられたことも理由のひとつです」

とTさんが話す。

 

「一部の部屋が暗くて湿っぽい」と不満だった以前の間取りからガラリと変更し、全ての居室が南の窓からの自然光で明るい住まいに生まれ変わった。

 

「建て替え前、現地にいらした社長に一言、『シロアリのにおいがしますね』と言われたのを覚えています(笑)」と妻Yさん。

建築当時は、近くに仮住まいをして、建築工事を見守った。

祖父は当時、毎日現場へ行き、写真を撮り溜めていたそう。

 

「大工さんが家に泊まったこともありましたよね」

「そうそう!本間大工さんが近くに借りたアパートからバイクで現場に来ると、末娘が後ろに乗せてもらったこともあって!すっかり懐いていましたね」

など、当時の思い出話は尽きない。

〈写真〉壮大なロケーションの中に誇らしげな大屋根と薪ストーブの煙突がバランスよく馴染み、まるで1枚の風景画のよう。

大きくせり出した両サイドの軒下は車庫や倉庫としても利用できる

美しく時を重ねる 自然と調和する生活

大屋根の一番高い天井を望むように、吹き抜けの床に背をつけて寝そべる。

「ただ、ごろーんと寝転ぶのが、気持ちいいんです」と妻Yさん。

 

伝統構法・木組みならではの登り梁を使った屋根組みが美しく、大工の腕と設計力を感じさせてくれる。

「もともと、金物を使わず、木と木を長いまま組み合わせていく伝統構法の家づくり100%ではじまった会社だったけれど、

現代の基準では耐震等級を取れないことや建築コストの高騰を背景に、木組みの家の施工は激減しているのが現状。

でも、やっぱり木組みはかっこいいね」と社長は語る。

 

続けて、「木組みができる大工はもちろん、それ以上に、構造計算も含めて木組みの家を設計できる建築士が減っている。

伝統構法でも在来工法でも、どう見えたらかっこいいかを、当時も今も、ずっと追求しています」と、T様邸を見て、改めて暮らしづくりへの思いを振り返る。

「欄間は建て替え前の家から受け継いだもの。

和箪笥も、その上の神棚も同様で、ぴったり間取りにはまるように、工夫して設計施工していただきました。

こうした、既にあるものを大事に使い続けていくのも大事だよなあって思うんです。

それが暮らしに馴染んでいく。

和の良さってそういうところかなって」と夫Mさん。
「建ててから12年も経つと、床や柱の木の色も飴色になってきて、猫がタタミを引っかいてボロボロになって(笑)。

子どもたちもあっという間に全員成人し・・・、身の回りは色々変わりますね」と妻Yさんは話す。

 

建築当時の写真と、今の自身を比較して、「老けたなあ」と社長がポツリ呟く。

暮らしは毎日続いていき、家はその家族や暮らしを、過去も今も、もちろん未来もまるっと包み込む。

それが「住まい」の役割なのだなと改めて実感させられた、T様邸だった。

2階ホールからバルコニーを望む。

大きく軒が出たウッドバルコニーは、冬の太陽を迎え入れるため手すりが斜めに設計されている。照明がやさしく左官の手仕事を讃える

夫Mさんが希望した薪ストーブ。

薪も自分で調達し、薪棚めいっぱいに積まれている

美しくエイジングした木製ドア

立派な欄間が構造のアクセントになっている

スケルトン階段の下はちょっとしたインテリア空間。

どっしりと構えた火鉢が暮らしを落ち着かせてくれるよう

家族だんらんのダイニング。

キッチンは土間になっていて、畑から収穫した野菜などの処理も楽にこなせる。

タタミのリビングには立派な和箪笥とピッタリサイズの神棚が

妻Yさんが好きな、寝転んだ時に望む吹き抜け天井。勾配屋根が暮らしを優しく包み込む

伝統構法・木組み独特の「追っかけ大栓継ぎ」は、若い大工さんにも見せたいとTさん

竣工当時のT様邸が取り上げられた雑誌記事。

新築当時の風合いも、家族色に染まって美しくエイジングしている今も、どちらも素敵だ

すまい手から、つくり手へ

縁あって、T様邸の末娘が今、ゼロクラフトグループのスタッフとして働いている。

「建築にはもともと興味があったみたい。

古民家とかを見つけると、潜り込んだような角度で写真を撮るなんてこともしばしばで。

左官にも興味があったようだけど、建築科での学びを活かせる仕事を探していたときに、「あ、零も求人があるよ」って(笑)。

年の近い、若くて元気なスタッフの方も多いから、いいんじゃないかなと。

もちろん、すまい手だからって、他の方と扱いを変えたりしないでもらいたい、とは社長に最初に伝えました」とTさん。

 

零の家で育った若者が、今はつくり手側として新たな暮らしづくりを続けている。

これまで私たちに住まいづくりを託してくださった、Tさんも含むすまい手さん方のおかげで、今も私たちゼロクラフトグループは存在している。

 

「改めて、20年続くのってすごいことですよね」と、Tさんが伝えてくださったその言葉が、じわっと優しく染み渡る。

実家を離れてゼロで働き出して3年目になります。

引っ越してすぐの4月、アパートがあまりに寒くて、ダウンジャケットを引っ張り出して着たのを覚えています(笑)。

実家と違い、窓を閉めっぱなしのアパート暮らしにあまり馴染んでいない・・・というのがホンネです。

 

実家に帰ると、すぐに靴下を脱いじゃいます。

高校生の時も、部活を終えて帰って、制服のまま、吹き抜け下の床にごろーんとするのが好きでした。

母とまったく同じことを言っていますね(笑)。

 

帰ってきた時に言う「ただいまー!」の一言で、どんな場所にいても家族の耳に届く、というのがいいなと思っています。

ゼロでの仕事は、これまでメンテナンス担当として、個性豊かで優しい沢山のすまい手さんにお会いできました。

ありがとうございました!

これからは内勤事務スタッフとして、すまい手の皆さんの暮らしに寄り添えるよう、頑張っていきます!

(スタッフ・チバユウワ)

取材後記

100棟記念の印象深い大屋根のT様邸、かつ、ゼロの家で育った子どもがスタッフになっている、ということで、実現させたかった取材でした。

伝統構法・木組みの構造がかっこいい。

エイジングした飴色の木の美しさや、おおらかであたたかなTさんご家族の人柄に触れ、改めて私たちのものづくりの意義を見つめ直すいい機会に。

取材へのご協力、誠にありがとうございました!

施工:建築工房零

担当大工:ものづくりのほんま(専属大工)

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